秋月ファンクラブ掲示板 過去ログ

オペアンプのオープンループ特性について - inara1

2012/05/26 (Sat) 10:47

知恵袋の質問にあるシミュレーションをやってみました。Tina-TIをバージョン9に
Upgradeしました(バージョン7ではOPA277とOPA121が使えなかったため)。

添付図は、入力信号をサイン波、振幅0.5mVpp、周波数10kHzとしたときの出力波形
です。オペアンプによって出力波形のDC成分が異なるのは、オペアンプ(シミュ
レーションに使ったオペアンプのモデル)によって入力オフセット電圧が異なるた
めと思われます。市販されているオペアンプは、理想オペアンプではないので、入
力オフセット電圧があるため、出力電圧にはDC成分が重畳されます。オペアンプの
型番によってはオフセット電圧が小さいものがありますし、同じ型番でも個体バラ
ツキがあります。回路シミュレーションに使われているオペアンプのモデルにもオ
フセット電圧が組み込まれていますが、その値はモデルによってまちまちです。
データシートに書かれている範囲以内であるのは間違いないですが、実際にどうい
う値になっているかは、オペアンプのモデル(SPICEモデル)を見るしかありませ
ん(Tina-TIのSPICELIBフォルダに入ってます)。

しかし、添付図の結果にはやや怪しい点があります。というのは、オープンループ
状態でのオペアンプのDC電圧に対する増幅率は極めて大きい(10万倍から100万
倍)ので、入力信号がない状態でも、オペアンプのオフセット電圧が増幅されて、
通常は、出力電圧が+側か-側に張り付いてしまうからです。

OPA277の場合、データシート
(http://www.tij.co.jp/jp/lit/ds/symlink/opa2277.pdf)3ページの Input
Offset Voltage の項目がオフセット電圧です。これがtyp(典型値)では 10μV
と書かれています。 10μV のオフセット電圧はオペアンプとしては非常に小さい
部類に入りますが、これが10万倍されると1Vに、1000万倍では10Vになります。
OPA277のオープンループ利得はデータシートの3ページの Open-Loop Voltage Gain
に書かれていますが、最低値(MIN)で 126dB(200万倍)あります。したがって、
オープンループ状態では、入力信号がない状態でも、オペアンプのオフセット電圧
が増幅されて、出力電圧が+側か-側に張り付いてしまいます(オペアンプのオフ
セット電圧は個体バラツキによって、+のときも-のときもあるので、飽和出力電
圧の符号も+か-かのどちらかになります)。

この続きは次に投稿します。