秋月ファンクラブ掲示板 過去ログ

オペアンプを使った電圧変換(Vout=A*(Vin-B)の作り方) - inara1

2014/03/27 (Thu) 12:49

オペアンプ1個と抵抗5本を使って Vout=A*(Vin-B) という形の電圧変換を行う回路
の抵抗値の計算方法を添付します。R2は電圧変換には直接関係なく、入力端子に何
も接続されていないときにオペアンプの入力端子が開放にならないようにするため
のものです。R2がこの回路の入力インピーダンスになります。

A、B、Vcc、R3、R4の値を先に決めれば、式(7)を使ってR5とR6を計算できます。一
般に、帰還抵抗R4を先に決めて他の抵抗値を決めることが多いと思われるので、R5
とR6の計算式にしましたが、式(7)から、R3とR4についても計算式を求めることも
できます。

この回路は、入力(Vin)をオペアンプの非反転入力端子(+)に直結しているた
め、A>1 という制約があります。さらに、基準電圧(V1)は、電源電圧(Vcc)
を分圧して作っているため、0 < B < ( 1 -1/A )*Vcc という制約もありま
す(Aが大きくないと実現できるBの上限が小さくなる)。上で「R3とR4の値を先に
決める」と書きましたが、R3は利得(A)を決める抵抗の1つになっているので R4
> ( A-1 )*R3 としなければなりません。

この後に数値例を紹介します。

Re: オペアンプを使った電圧変換(Vout=A*(Vin-B)の作り方) - inara1

2014/03/27 (Thu) 12:50

添付図は、R3=0とした場合(上段)とR3=1kΩとした場合(下段)の計算例です。
どちらも A=10、B=1.1V、Vcc=5V という条件下で、R4の抵抗値がE12系列のときの
R5とR6の抵抗値を表にしたものです(前の添付図の式(7)で計算したもの)。

R3=0の場合、赤色の数値で示した組み合わせのときに、R5またはR6の抵抗値がE12
系列の値になります。抵抗値が中途半端な数値だと、1本の固定抵抗では実現でき
ないので、半固定抵抗などでその抵抗値になるように調整するか、固定抵抗を組み
合わせて合成抵抗で実現するという方法になります。しかし、R5とR6の一方がE12
系列になっていれば、中途半端な抵抗値は1つだけで済みます。こうなる組み合わ
せは、添付図の表の範囲では9通りあります(良く見るとR4の抵抗値の桁が変わっ
てもR5やR6の数値部分は同じになっています。これはR3=0の場合だからで、R3>
0の場合は異なる数値になります)。

R3=1kΩの場合は、R5またはR6の抵抗値がE12系列の数値になる組み合わせはありま
せん(これは A=10、B=1.1V、Vcc=5V という条件の場合で、他の条件ではE12系列
の数値になる組み合わせがあるかもしれません)。R4<10kΩのとき、R5とR6の
数値が負になっていますが、それは R4 > ( A-1 )*R3 という条件を満たして
いないからです(R3=0の場合はこの条件は R4 > 0 となるのでR4の下限はあり
ません)。

R3=0とすれば、抵抗を1本減らせる上、R5とR6の一方にE12系列の抵抗が使えるの
で、この計算例の条件( A=10、B=1.1V、Vcc=5V)の場合には、R3=0としたほうが
すっきりした回路になります。

Re: オペアンプを使った電圧変換(Vout=A*(Vin-B)の作り方) - chy_farm

2014/03/27 (Thu) 23:14

これは相当上級者向けですか?

難しくて、とても頭の整理がつきません。
どういうときにこれが使われるのですか?

Re: オペアンプを使った電圧変換(Vout=A*(Vin-B)の作り方) - inara1

2014/03/28 (Fri) 18:20

chy_farmさん
これはオペアンプの基本回路の1つの減算器
(http://home.n05.itscom.net/yone-lab/electronics/opamp_sub/opamp_sub.html
)を変形したものです。計算が少しややこしいですが、抵抗だけの回路なので初級
です。

このような回路はセンサの出力電圧を扱いやすい電圧に変換するようなときに使い
ます。自作電源で使った温度センサ(LM35)は、0℃のときの出力電圧が0V、100℃
のときの出力電圧が1Vと、V単位の出力電圧がそのまま℃単位の温度に対応してい
て便利なのですが、温度センサの中にはそうなっていないものがあります。

例えば、LM60(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-02490/)は、0℃のとき
の出力電圧は424mV、100℃のときの出力電圧は1049mVなので、出力電圧をそのまま
測定しても℃単位の温度に対応しません。そこでこのセンサの出力電圧を 1.6*(出
力電圧[V]-0.424) という式で変換されるような回路を入れれば、その回路の出力
電圧は、0℃のときは0V、100℃のときは1Vとなって、電圧計の読みがそのまま温度
になります。

計算方法
(http://bbs3.fc2.com//bbs/img/_454800/454703/full/454703_1395892161.jpg)
の式(1)から式(4)は単純なオームの法則です。この4つの式から式(5)を導出するの
はちょっと面倒です(手計算でもできますが、私は数式処理ソフトを使って導きま
した)。電子回路の設計では、このような計算は必須ですので、chy_farmさんも是
非マスターしてください。

Re: オペアンプを使った電圧変換(Vout=A*(Vin-B)の作り方) - chy_farm

2014/03/29 (Sat) 00:21

なるほど、そういう用途ですか。
それは便利ですね。人体の計測データで、体温は書くことが出来ませんから、これ
はきっと使うときが来ますね。
ありがとうございます。

計算方法も良く読んでみます。
inara1さんの「授業」は進展が早く、範囲が広いので勉強時間が足りません。

先日の資料も、キャリアの存在確率のところの、フェルミ・ディラックの式をやっ
と飲み込めてきたところです。でも、応用問題を解け、といわれてもまだです
ね、、、

(もし試験でもあったら毎回赤点かも知れません。)